長岡高専OB無線部

JA0YCW・Wires-Xモバイルノード局

JH0EYA (2016/01/16)
Update(2016/12/07)

[NODE]
 2015年のハムフェアに出掛けたとき、アタッシュケースに入ったWIRES-Xのノードシステムを見かけました。  1つはDC電源を想定し、タブレットPCを利用した非常にコンパクトなシステムです。もう一つ見かけたのは、AC電源を想定したこれまた非常にコンパクトなシステム。むう、モバイルノード局ですか、あこがれますなあ。と、現場を後にしたのでありました。  それから4ヶ月後、なんとなく自分も作りたくなりました。「鞄の中にPCと無線機とHRI-200を詰め込めば終わりでしょ?」と簡単に考えて挑戦を始めたのですが、それから奥深い経験をさせていただいたのでありました。

■□■ 現在のNG-JA0YCW稼働状況(コールサインでページ内検索) ■□■

1:利用目的の検討
 公衆用のモバイルネットワークが完備された都会では、たとえトンネルの中を走行中でもモバイルによるネットワーク接続が可能です。高速走行でも無線がバタつかず安定した接続ができます。
 こんな環境ではタブレットとデータ通信端末を購入すれば、快適なWIRES-X環境が構築でき、どこのノード局に頼らなくても、常に車載したノード局、いわゆるマイノードでWIRES-Xにアクセスできます。
 ところが私の住んでいる場所では、私の利用しているデータ通信端末のせいもありますが、通勤ルートの半分は「圏外」一部は携帯電話さえつながらないところもあります。 遊びに出掛けるにも人家の密集地帯以外はほぼ圏外。自動車で走りながらマイノードを楽しむような環境ではありません。ああ、悲しき地域格差。(^_^ゝ
 なので都会的な洗練された(?)マイノードの構築はあきらめました。

 一方、そんな田舎ですので、山間部の谷間にある集落では144MHzや430MHzの電波も期待するほど飛んでくれません。自分の住んでいる地域をV/UHFのモービルでカバーするのは難しいのです。ましてや長岡駅近所におわしまする長岡市役所に直接電波を届けるのは至難の業。非常時にアマチュアが市役所に設置されても通じません。

      「これでは災害時の通信確保に困るでは無いか!」

 いや、各集落に衛星携帯を装備している小千谷市なんてのがありますが、長岡市がそんなものを配備したなんてのは聞いたことがありません。なので、孤立防止用に役立つかなぁ?と思い立ちそちらの観点から移動用ノード局を作ろうと思いました。(もっとも全集落にHAMが居るわけでは無いのでありますが(笑))
 まあ、作るためのこじつけだとでも思って下さい。

2:完成品のイメージを考える
 クルマで走りながら利用するわけではありません。非常時に「発災山間部からのV/UHF電波が届き、かつネットワークに接続できる場所。」に腰を据えて運用する形態を想定してます。幸い、電源は普段の移動運用を考慮してバッテリやら発電機やらは完備しております。外部アンテナもポールを立てれば地上高6mにはなります。
 そんなわけで、マイノードとは言っても自分が交信するのを目的とするのでは無く、いざというときに皆様に使ってもらうことを念頭としております。ですからコンパクトさを求めるよりも・長時間・そこそこの出力で・安定稼働・することを目指すことにしました。

 もう一つの条件として、RIGはFT-M100D、それとHRI-200。それらが決められた鞄に入ること!!
 何故かというと、空いている鞄がこれしか無いからです(笑)。内部に詰めるものの大きさを計測しないウチから外形寸法を決めてしまう。おまえはソニーか!(^_^ゝ
 RIGはFT-M100Dなのでデジタルでのノード開設も可能ですが、ここはあえてアナログにすることにしました。ここらにお住まいで無線機を持っている方々は皆々アクティビティの低い方ですので、従来の無線機が使えないと本当に誰もアクセスできないと考えたからであります。(ひょっとすると430にすら出られない人が多いんじゃ無いかと)

ということで制作(詰め物?)を始めたのですが、経緯としては4バージョン作成し完成に至りました。

3:バージョン1を作成
【想定】
  ・発電機利用を前提とし、AC電源利用で構築
  ・出力は最大10W
  ・PCはノートパソコンを利用(ジャンク再生品)
 このほかに必要となるのは「安定化電源」「PC用ACアダプタ」となります。鞄の大きさが既に限定されてますので一番の問題となるのが安定化電源です。スイッチング電源は小さくなったとはいえやはり結構な大きさです。FT-M100Dは20Wで7A食います。さすがにフルパワーを確保する電源は鞄の中に入り切れそうもありませんので、出力電流が連続で5Aという第一電波工業のDSP500を選択しました。「20Wで7Aならば10Wで5Aもあれば大丈夫なのでは?」という希望的観測に基づくものです。

 RIGの真後ろにLタイプのM型コネクタ(で意味通じるのかしら)を取り付けてアンテナを上面から接続できるようにします。あとはHRI-200と安定化電源、ノート用ACアダプタとノートPC本体を鞄に詰めるだけなんですが、これが何というかパズルのような感じでして(笑)。
 一応鞄で運ぶことを考えると「ガチャガチャ」音がするようでは壊れてしまいます。かといってパンパンにすると液晶画面に傷がついたりする可能性もあります。また小さい鞄なのでそれぞれに付属しているコードの処理が結構面倒です。切断して短くすれば収まりも良いのでしょうが、貧乏人の悲しい性で再利用を考えると切断する気になりません。 そんなわけで配線の取り回しにもだいぶ苦労しました。

 で、完成したのがこの第一バージョン。鞄を開けてACコードを刺せば起動状態になります。
 ハードウェアは以上で完了ですが、ソフトウェアの設定で一個つまずきました。
 WIRES-Xを使用するには46100、46110、46112、46114 、46120、46122の6つのUDPポートを外部に開ける必要があります。自宅の固定回線ではUPnP機能であっけなく解放できたのですが、データ通信端末を使った場合全く開いてくれません。
 どうやら契約しているキャリアによって、グローバルIPで接続するモバイルルータとキャリア内のローカルIPで接続するデータ通信端末があるようです。私が使っているデータ通信端末は後者のローカルIPで接続するようで、これだとUDPポートを開けることは出来ません。
 計画をあきらめかけていたところ、このような環境でもグローバルIP取得が出来る「マイIP」というサービスがあることを知りました。月額1000円ですから個人でも何とかなりそうな価格です。ページの情報を頼りに設定をすると回線接続し、見事にポート開放されました。これで完成! \(^o^)/

   というわけで完成させたのであります。鞄の中にノンラジアルのモービルアンテナも入れますと、どこでも手軽に持ち運びが可能です。何かのミーティングの折に持って行っても、家庭用コンセントに差し込めばすぐにデモが出来るのでAC電源利用はとても便利です。
 反面、クルマで出掛けてそこらの公園で手軽に・・・というわけにはいきません。AC電源なので発電機の用意が必要です。平時にそこらの公園で発電機動かしていたらうるさいと言われますよねぇ。ちょっと困ります。
 そこで、バージョン2に挑戦することにしました。

4:バージョン2を作成
【想定】
  ・外部からのDC電源を用いる
  ・省電力省スペースを目指し、タブレットへの換装
  ・出力は最大20W
 この場合、使用する機器は「タブレットPC」「HRI-200」「FT-M100D」このほかに「12V→13.8V昇圧器」「5V電源」「USBハブ」という構成です。
 例によってこれらを鞄に押し込むだけですから組み立ては超簡単♪

 トラブル
 電源を入れて組み上がったのですが「データ通信端末がネットワークに接続しない」「充電しながら使うつもりだったのに充電しない」「ネットワークに接続できても交信しようとすると落ちる」等々、たくさんの不具合が出てしまいました。
 対応
 私が使っているデータ通信端末はいわゆるWi-Fi対応では無く、USBコネクタに差し込むタイプです。つまりタブレットとUSB接続して使う必要があります。他にもHRI-200とタブレットを接続するのもUSB経由、そして、タブレットの電源もUSBです。
 だというのにタブレットに装備されているUSBコネクタは一個だけ。
 そこでOTGケーブル+USBハブを使用してみたのですが不安定動作・・・。これはひょっとしてUSB機器が大メシぐらいで電力不足なのかしらん?と思いましてセルフ給電タイプのUSBハブを買ってきました。が、これもタブレットに充電してくれませんし、やはりデータ通信端末が動作不安定。

 なんか買い物が次々と無駄になっていくような気分ですが、最後にもう一回と思い、今度はOTG機能付きのUSBハブを購入してみました。これはタブレットに充電しながら動作してくれますしデータ通信端末もちゃんと動作します。やれやれと喜んだのもつかの間、今度はHRI-200に音声が流れてくれません。「?????」泣きたくなりました。

 おそらく、データ通信端末がWi-Fi対応であればUSBハブを使用すること無くOTGケーブルだけで済みますので、ここまでのトラブルは発生しないのでありましょう。しかし、これだけのためにデータ通信端末を買い換えるのはお財布が許してくれません。あれこれと2週間ほど格闘してみましたが、タブレットでの運用はあきらめることにしました。

 あと、この作業を行っているときに、RIG直結のモービルアンテナから10Wを出力すると瞬間的に画面が輝き回線の接続が切れルという事態が発生しました。どうやらRFが回り込んでいたようです。配線に分割フェライトコアを仕込んだところ、見事に直りました。フェライトコアってすごいですね。(^_^ゝ

 なお、この写真はDC電源版ではなく、タブレットがあまりにも動作不安定だったので、タブレットを付属のアダプタから電源供給してみようと思い、AC電源に換装したときのものです。
 無線機用の電源にはALINCOのスイッチング式 32A DM-330MVを入れて、50Wでも大丈夫という意欲作だったのですが、結局タブレットが動作不安定でボツになりました。(苦笑)

5:バージョン3を作成
 バージョン2の動作不安定さに落ち込んでしまいましたが、そのまま元に戻してAC電源仕様にするのもイヤです。そこでバージョン1の構成で電源をDC電源とする方式を考えました。
 ・DC電源利用で構築
 ・出力は最大20W(DC電源に依存)
 ・PCはノートパソコンを利用(ジャンク再生品)
 この組み合わせですと必要になるのは、「FT-M100D」「HRI-200」「ノートPC」あとは「ノートPC電源」です。

 使用するノートPCはDC19V仕様です。13.8Vを19Vに上げてやる必要があります。何か手持ちは無いかと探していたところ、昔、山形県は酒田市のガマさんから有償で譲っていただいた昇圧装置がありましたのでこれを使用します。このほかにバージョン2で使用した12V→13.8Vにする装置も入れたいところですが、スペースの関係で中に入りそうも無いのであきらめました。

 DC電源の入手先は、クルマのシガーライタープラグ、もしくはやはり車載の安定化電源(この場合はその先に発電機)の2つのパターンが想定されますので、どちらにも対応できるように延長プラグを用意しております。
 完成形は以下の通りです。バージョンが変わってもあまり代わり映えしないのは、鞄がすべて同じだからでしょう。なお、この構成でRIG直結のモービルアンテナから10Wを出力してみましたが、特に回り込み等は発生しませんでした。さすがはノートPCなんともないぜ!



6:実運用してみた
 バージョン3を車載してみました。
 鞄を閉めたままでは使えないシステムなので、助手席に鞄を置いて開きます。アンテナはとりあえずRIG直結にして電源を入れるとWIRES-Xノード局がちゃんと起動しました。 \(^o^)/
 これに気をよくして走り始めるとデータ通信端末が「圏外」表示に・・・。うーむ、やはり田舎で走りながら運用するのは幹線道路でも無い限り難しいですねー。
 というわけで国道を走ってみるとそれなりに大丈夫のようです。が、国道沿いはアマチュア無線的には飛びがイマイチ。そこで一本はずれた地方道に行くと、無線的には良いロケーションなのですが見事圏外。凸(-_-メ)
 なかなか両立できる箇所が見つかりません。

 とりあえず、栃尾地区の西谷方面と東谷方面に適するであろうと思われるポイントを確保してみました。あとは塩谷方面をカバーできるポイントを確保する必要があります。
 で、本当にそれで交信できるのか?
 昔ならば交信相手に不自由することも無かったのですが、今じゃこうして無線遊びをやっているのは栃尾地区では私だけでありましょう(笑)。交信できるかどうかテストするのにも不自由しております。いずれ誰かをつかまえて交信実験をしてみたいものであります。

 想定では、発災時に長岡の某社団局がWIRES-Xノード局を立ち上げてNG-JA0YCWのルームに接続し、そこにこの移動用ノード局も接続するという想定になっておりましたが、すったもんだ有りまして計画が頓挫。私にしてみれば、二階に上がってはしごを外された気分です。
 ですが、現在常時接続しているルームには長岡市の川西方面にあるノード局も常時接続してますので、ある意味当初の目的は果たせたかなと思ってます。
 ここでかっこよくネットワーク図を掲示して実名を出しておけば非常時に役立つのでしょうけど、関係者の了解を得ておりませんのでボンヤリとさせていただきます。m(__)m

 ま、非常時のことだけ考えていてもどうしようも無い(というか常時使用していなければ非常時に使えるわけが無い)ので、しばらくはあちこちに持ち歩いて遊ぼうと考えております。

7:バージョン4を作成
 あまりにも接続可能範囲が狭すぎるため、モバイルルータを交換。今度はWi-Fi接続可能なルータにしてみました。
 おかげで初期の想定だったタブレットが利用できるようになりました。これで想定していた運用が完全に可能に! \(^o^)/

 今度は八方台の頂上や只見駅の駅前でも運用可能です。というかしてきました。走行中の運用も可能であります。

  気になり始めたのは、運用中はこのように必ず鞄を開けた状態で無いと利用できないと言うことであります。
 自動車で走行中や、そこらに装置を置いて離席したいような場合には、鞄を閉じたまま運用したいですねえ。まあアンテナコネクタと電源は鞄に穴を開ければなんとかなりそうですが、問題は放熱ですねー。コレも穴を開ければなんとかなりそうですが、廃熱ファンとか考えないと。あ、そうなると水に弱くなりますねー。
 まだまだいろいろと考えることが出て参ります。(苦笑)







NG-JA0YCW2 諸元
 周波数 433.80MHz(TONE 88.5Hz)
   あるいは
 144.50MHz(TONE 88.5Hz)
 (災害時にはTONEをOFF予定)
 出 力 1W(最大 20W)
 空中線 モービルホイップ
 種 別 アナログノード局(移動運用専用)
(C4FMも可能)
 回 線 モバイル通信端末
 ノード #19607(NG-JA0YCW2)
 ルーム #29158(常時接続)
 #22872(長岡市栃尾QSOルーム)

7:最後に
 非常時に有線やモバイル通信端末を頼る想定なのはいかがなものか?

 私もそのように考えました。が、21世紀以降の身の回り(地元)で起きた地震・水害・雪害を見るに、旧市内が全面的にブラックアウトした事はありません。どこかしらで電気・通信が生き残ってました。なので、たとえJA0YCW常置場所がNGになっても、移動局であればどこかで開設可能であると考えております。

 仮に旧市内全域で電気・通信が止まるようなことになれば、それはもう東日本大震災クラスの広域災害と考えます。
そうなると利用する周波数はV/UHFではなく、HFの出番と心得ております。官公庁相手ならば4630kHzな訳ですが和文CWの腕がさび付いてしまいました(相手もCWの準備があるかどうか不明だし)。かといって音声の2182kHzはアマチュアが出せないし。
 やっぱり7MHzとかでしょうかねえ。(^_^ゝ




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