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電波法ウンチク

JH0EYA (2005.11.08)
update (2014.04.11)

 山岳登山による遭難と非常通信

Q:山岳登山で遭難した場合は「遭難通信(SOS)」なのか「非常通信(OSO)」なのか?
A:遭難通信ではありません。また非常通信も状況が限定された場合のみ許されます。

 アマチュア無線局は必ず無線局免許状総合通信局から発行されています。そこには「通信の相手方」「通信事項」「識別信号」「運用許容時間」「電波の形式及び周波数」「空中線電力」が記載されており、この記載内容を超えて無線局を運用することはできません。これを示しているのが電波法第52条〜第55条です。

電波法第52条
 電波法第52条では、免許状の「通信の相手方」若しくは「通信事項」を超えた通信をしても良い場合として
     
  1. 遭難通信(SOS、遭難,MAYDAY)  
  2. 緊急通信(XXX、緊急,PANPAN)  
  3. 安全通信(TTT、警報,SECURIETE)  
  4. 非常通信(OSO、非常)  
  5. 放送の受信  
  6. その他総務省令で定める通信

 と、6つの場合を挙げています。このうち、「5.放送の受信」は常識的な内容と申せましょう。

 「1.遭難通信」から「3.安全通信」までは条文を見ておわかりの通り、全て船舶又は航空機に関連する条文です。従って状況にもよりますが、アマチュアの陸上同士の交信では、遭難通信・緊急通信・安全通信はまず発生しないと申せましょう。当然、山岳登山で「遭難」しても、無線通信では「遭難通信」とはなりません。
 (ご自分が船舶や航空機に乗っていて他に通信手段が全くないときには、アマチュア無線による遭難通信もあり得るとは思います。)

 「4.非常通信」は「地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において」という前提が必要な通信です。暴動などという人災も入ってはいますが、いずれにしても自然災害が発生したか自然災害が発生しうる場合に行うのが前提となります。
 自然災害が発生していない状況で滑落や交通事故等が発生しても、それは非常通信ではないということになります。

 それではアマチュア局が人命救助を行う方法はないのか?というと、電波法第52条「6.その他総務省令で定める通信」を適用することによって通信可能です。これは「電波法施行規則: 第37条」に詳しく記載されており、人命救助に関してはその「第33号」が適用されます。
 しかし、これは電波法で言うところの「非常通信」ではないのです。

電波法第53条〜第56条
 電波法52条もそうですが、あれをしてはいけないこれをしてはいけないと、いろいろ締めつけが書いてあります。逆に考えれば、「それ以外はしても良いよ」というわけです。それをちょっとまとめてみました。
 遭難通信の時は何をやっても「許可」のようですが、その他の通信ではいつもとほとんど変わらない制限がかかります。非常通信では通信の相手方を逸脱しても良いとありますが、これとて周波数を逸脱して良いわけではありませんので、普通に考えれば通信の相手は自然とアマチュアだけということになります。

 ただし無線局運用規則 第130条で述べられている4630kHzという周波数は、アマチュアも業務局(いわゆるプロ)も利用可能な非常通信専用周波数ですので、この周波数を免許されているアマチュア無線局であれば、非常通信時には通信の相手方を逸脱して、業務局(例えば警察庁・自衛隊・海上保安庁等の行政機関)との直接通信も可能と言うことになります。  (ただし海上保安庁はモールス信号による通信の扱いを既に行っておりませんし、他の業務局も自衛隊以外は同様な状況と考えられますので、大規模災害も含め、非常時にこの周波数が役立つかどうかは大変疑問の多いところです。)

 業務用無線局は次々とデジタル変調へと移行しており、我々アマチュアが直接傍受できる業務局は年々少なくなります。アマチュアが業務局との連携を無線だけで行うのは、不可能といっても良いでしょう。携帯電話を「110番」や「119番」にダイヤルするためだけに用意する人は居ません。アマチュア無線も平常時の楽しみのためにお使い下さい。


無線従事者とアマチュア無線

Q:アマチュア無線の非常通信では、従事者の資格が無くても無線機を扱ってもよい
A:可能ですが、あくまで免許人が運用できない場合であります。

 電波法施行規則 第33条の2 では「無線従事者の資格のない者が無線設備の操作を行うことができる場合は、次のとおりとする。」で始まります。そして、この条文の第2号には「非常通信業務を行う場合であつて、無線従事者を無線設備の操作に充てることができないとき」と記載されていますので、出来そうです。

 またこの第33条の2の始めに書いてある「法第三十九条第一項ただし書の規定により」というのに注意してみましょう。この条文である電波法第39条第1項を参照すると、とてもわかりにくい文章です。
 これを整理すると以下のようになります。
     
  1. 無線設備の操作を行うことができる無線従事者以外の者は、主任無線従事者として選任された者でなければ、無線局の無線設備の操作を行つてはならない。  
  2. ただし、船舶又は航空機が航行中であるため無線従事者を補充することができないとき、その他総務省令で定める場合は、この限りでない。

 「アマチュア局を除く」という但し書きは、上記1.の「無線局」に対しての注釈ですので、上記1.についてはアマチュア局は対象外ですが、2.についてはアマチュア局にも当てはまります。この2.に記載されている「その他総務省令で定める場合」というのが電波法施行規則 第33条の2 ということになります。
 従って、非常通信の際には無線従事者の資格が無くても無線設備の操作を行えます。しかし、その責任は免許を受けた人(免許人)にかかってきます。当然、免許を受けていない無線機を無線従事者の資格もないのに非常時を想定して携帯することは許されるものではありません。


 さて、通常時の運用はどうでしょうか。
 アマチュアには電波法第39条だけではなく、電波法第39条の13も適用されます。これだと通常時、アマチュア局の操作は無線従事者の免許人でないと使ってはいけないことになります。
 「ただし」
     
  1. 日本のアマチュア無線技士に相当する外国の資格を有するもの  
  2. その他総務省令で定める場合

 の場合はOKのようです。

 これらは電波法施行規則 第三十四条の八から第三十四条の十に渡って述べられており、総務大臣が告示した内容に従えと書かれております。  それでは総務大臣の告示内容はというと、外国資格に関しては8ヶ国の外国資格が認められております。その他の総務省令に関しては国際宇宙ステーションとの交信が条件付きで認められています。なお、国際宇宙ステーションのNA1SSという無線局は、米国の正規なアマチュア無線局です。
 国際宇宙ステーションとの交信に関する詳細は、安田さんのARISSスクールコンタクトをご覧下さい。




 最後にもう一つ、非常時の従事者以外の運用が可能との根拠となりそうな条文に、電波法第七十条の七があります。

 「無線局(その運用が、専ら第三十九条第一項本文の総務省令で定める簡易な操作によるものに限る。)の免許人等は、地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために必要な通信を行うときは、当該無線局の免許等が効力を有する間、当該無線局を自己以外の者に運用させることができる。」

 カッコ部分を読み飛ばして読むと、非常時には誰でも無線局を運用できそうですが、上記ではカッコ書きの中身も重要です。なんたって「〜ものに限る」と限定しておりますので・・・。

 では、カッコ書きにある「第三十九条第一項本文の総務省令で定める簡易な操作」とは何かというと、電波法施行規則の第三十三条に記載されております。

 この規則の条文中には「アマチュア局」という文言は出て参りません(ナントカ局という単語の説明は、同規則の第二条から第四条を参照)ので、電波法第七十条の七は、アマチュア局とは無関係ということになります。


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