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モールス信号ウンチク

JH0EYA (2009.07.22)

 遠くにいる人と連絡をすぐに取りたい。
 この要求は古代よりありました。そうした場合に使われたのは狼煙(のろし)であったり太陽の光だったり闇夜の光などが古来使用されていました。光による意思伝達は、戦争映画などで良く目にしますよね。船同士で光の点灯・消灯を繰り返すことで意志を伝達するわけですが、これなどもデジタル通信の元祖といえるでしょう。このあたりの歴史は、東京・武蔵野市にある「NTT技術史料館」に行くと詳しく述べられています。興味ある人は是非一度足を運んでください。

 無線電信に使われる「モールス信号」は1837年、アメリカのサミュエル・モールスよって発明されました。長音(ツー)と短音(ト)の組み合わせでアルファベッドと数字を通信できる符号を組み立てたのであります。しかも彼はその信号表を組み立てる際に新聞社に出かけ、最もよく使われる活字 A、E、I、T などが最も短い(簡単な)符号になるよう工夫したと言います。余談ですがパソコンのキーボードの配置でもそのような配慮(使いやすい配置)がなされているとのことですが、雨だれ打ち(ポツポツ)の私には理解しかねます。(^_^ゝ

 私らの世代で最も有名なモールス信号は「SOS」ではないでしょうか?なんたって一世を風靡したピンクレディーのヒット曲にイントロとして使われていましたからね。(爆)
 この「SOS」は遭難信号といいまして、船舶や航空機が発して救助を求めるモールス信号です。実際に使用されたのは、映画でも有名なタイタニック号が発したのが最初といわれています。それまでの遭難時に使われる緊急信号は「CQD」でした。タイタニック号も遭難当初は「CQD」で救助を呼びかけていたとのことですが、近所にいる船が応答してくれないため、途中から新しく遭難信号に制定された「SOS」を打電し始めたと言います。丁度使用する信号が変わる移行期での遭難でした。なぜ「SOS」が遭難信号になったのかは不明ですが、「トトト・ツーツーツー・トトト」と簡単明瞭な信号は非常に覚えやすい響きがあります。
 このように世界の海で大活躍したモールス信号も1999年で業務用通信(無線電報や公的な救難任務)では使用されなくなりました。

 しかし、アマチュア無線の間では健在です。下記の符号を使って国内・国外を問わず、盛んに通信が行われています。


 
欧文モールス符号

A ・−
B −・・・
C −・−・
D −・・
E ・
F ・・−・
G −−・
H ・・・・
I ・・
J ・−−−
K −・−
L ・−・・
M −−
N −・
O −−−
P ・−−・
Q −−・−
R ・−・
S ・・・
T −
U ・・−
V ・・・−
W ・−−
X −・・−
Y −・−−
Z −−・・


1 ・−−−−
2 ・・−−−
3 ・・・−−
4 ・・・・−
5 ・・・・・
6 −・・・・
7 −−・・・
8 −−−・・
9 −−−−・
0 −−−−−
. ・−・−・−
, −−・・−−
: −−−・・・
? ・・−−・・
’ ・−−−−・
− −・・・・−
( −・−−・
) −・−−・−
= −・・・−
/ −・・−・
+ ・−・−・
” ・−・・−・
* −・・−








 なお、日本語用のモールス信号(カタカナ対応)もあります。次のページをご覧下さい。
 また、日本語用のモールス符号以外にも、各国語対応(ロシア語とかギリシャ語とかアラビア語とかハングル語とか)のモールス信号が存在します。「Morse codes」

 ハングル語の場合、文字のパーツ(不勉強の為なんて言えばいいのか判りません)毎に符号が決まっており、2文字もしくは3文字のアルファベット記号で1文字のハングル文字が出来上がるようです。SKATS(Standard Korean Alphabet Transliteration System)と言うらしいです。

 中国語のモールス符号の場合、漢字を4桁の数字でコード化して送受信しています。この漢字コード一覧を「電碼 (でんま)」と言います。UNICODEとかJISコードとか、漢字コードは色々ありますが、その元祖とも言えるでしょう。
 実際に漢字を中国語モールスに変換してみたい方は、こちら(Chinese Telegraph Code)をご利用下さい。漢字をモールス符号用の数字に自動変換します。


■□■ 「目的外通信」("SOS"と"OSO") ■□■

 上の方で『「SOS」は遭難信号』と説明致しました。
 この遭難信号を通信の最初に送信してから行う通信を遭難通信と言います。

 遭難通信は電波法で 「船舶又は航空機が重大かつ急迫の危険に陥つた場合に、遭難信号を前置する方法その他郵政省令で定める方法により行う無線通信をいう。」 と明確に定められております。 つまり、陸上での遭難通信はあり得ないのであります。登山で遭難して助けを求める場合も「遭難通信」ではありません。


 この他に「非常通信」というものがあります。非常通信は「SOS」ではなく「OSO(非常)」信号を通信の最初に送信してから行います。

 非常通信は電波法で 「地震、台風、洪水、津波、雪害、火災、暴動その他非常の事態が発生し、又は発生するおそれがある場合において、有線通信を利用することができないか又はこれを利用することが著しく困難であるときに人命の救助、災害の救援、交通通信の確保又は秩序の維持のために行われる無線通信をいう」 と定められております。携帯やスマホが使えるなら、まずはそっちを使いなさい。それが出来ないときは、無線で非常の連絡を取ってもいいよ。というわけです。

 いずれもこれらは、正式な免許を受けた人達が非常時にはどのような処置を行わなければならないかを述べたものであります。
 非常時に資格のない人や免許を受けていない人が無線を運用しても良いという条文ではありません。
電波法第52条の目的外通信の条文は最初に「無線局は」から始まっています。無線局とは無線設備及び無線設備の操作を行うものの総体を意味しており(電波法第2条の第5号、目的外通信を行うに当たっても無線設備を操作するのは免許人である必要があるのです)


 「遭難通信」や「非常通信」のように、無線局本来の目的をはずれて行う通信を「目的外通信」といいます。アマチュア無線が扱う可能性のある通信としては「非常通信」の他に、電波法第52条第6号「その他総務省令で定める通信」として「電波法施行規則: 第37条 第33号」があります。

 「非常通信」は天災などを例示して想定しているのに比べ、「電波法施行規則: 第37条 第33号」は人命救助などが主目的とされております。

 山岳登山で「遭難」し、アマチュア無線で救助を求める場合がありますが、その場合はこの「電波法施行規則: 第37条 第33号」が適用されると考えられます。キャンプやレジャー、交通事故などもそうですね。
 つまり山岳登山で救助を求める場合は、電波法的には遭難通信でもなく非常通信でもなく、単なる目的外通信と言うことになります。ただし、台風や水害等の災害を伴う場合は電波法第52条第4号の「非常通信」扱いとなります。

 ほとんどの無線局にとって上記のような通信は、無線局本来の目的を逸脱した通信であるわけです。従って、上記のような非常時の通信を目的としてアマチュア無線局を開局することは出来ません。

 ※詳細は電波法ウンチクもご覧下さい。


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